たぶんか便り

web版『たぶんか便り』創刊

【団体インタビュー 002】フィリピン人移住者センター

2018年04月15日 19:02 by tabunka_tokai
2018年04月15日 19:02 by tabunka_tokai

日本で日常的な問題を抱えるフィリピン人を支えるセンター

日本にいる外国人が困難なく暮らすこと。フィリピン人移住者センター(以下、FMC)は、"移住者たちと地域がひとつのコミュニティとして力を合わせ多文化共生社会を築くこと”を目指し活動しています。代表の石原バージさんが、仲間とともに10年間にわたって労働や家族、女性の権利など、在日フィリピン人の抱えている問題の解決に取り組んできたことが、名古屋市におけるフィリピン人自助組織の形成につながっています。

2010年9月19日、名古屋市中区役所でFMC設立10周年記念イベント「地域の社会統合に果たす移民の貢献:次の10年に向けて」が開催されました。当日は約100人の参加があり、そのほとんどがフィリピン人でした。休憩時間には参加者の生の声を聞くこともでき、在日フィリピン人の現状を知ることができました。後日、FMCのこれまでの活動や今後の課題などについて詳しく聞くため、名古屋市内にあるFMCの事務所で、石原バージさんにインタビューをさせていただきました。

(左:石原バージさん、右:FMCスタッフの後藤美樹さん)

これまでの貢献

グローバリーゼーションの時代において、多くのフィリピン人たちが日本人の配偶者や研修生など、さまざまな立場で日本にやってきて、ここ東海地域でも仕事を見つけ暮らしています。しかし、そこでトラブルが発生したとしても、彼・彼女らの多くはどこに助けを求めてよいのかわかりません。このことが、フィリピン人の日本での生活をより厳しいものにしています。

バージさんは2000年6月、名古屋の中心地である栄(さかえ)エリアの小さな事務所で、フィリピン人コミュニティのための支援センター「FMC」を立ち上げました。FMCは、在留資格や労働問題、離婚、ドメスティックバイオレンス(DV)など幅広い相談に応じており、場合によっては、市役所や病院、警察などに同行するなどして、問題解決への手助けをしています。

また、名古屋市周辺のほかのフィリピン人団体と連携し、行政や法律の専門家の協力も得て、児童手当や生活保護などの行政サービス、DV等について学ぶセミナーを開催したり、名古屋市や犬山市などの行政機関との意見交換会を実施したりしました。このような機会をつくることにより、フィリピン人住民は生活に役立つ情報を得ることができ、行政は外国人が抱えている問題を把握することができると考えています。バージさんは「ネットワークはFMCの命。アイディアを共有し、議論を重ねていくことで協働事業が実施できる」と言います。FMCでは、地域のフィリピン人団体や外国人支援団体、女性団体、国内外に拠点をおく移住者団体等とも連携をはかっているそうです。

 

努力と継続によって成されること

この10年間、FMCはフィリピン人同胞の支援に日々を費やし、さまざまな試練と闘いを経験してきました。その結果、国や自治体、NPO/NGO、マスメディアなどの間でフィリピン人の生活をリアルに語るグループとして少しずつ認知され、信頼を得ていきました。

バージさんは、「完璧ではないけれど、少しずつ着実に良い方向に進んでいる。みんなで力をあわせて努力し、団結すれば必ず成果を上げることができると思う」と笑顔で話してくれました。続けて「次の10年は、こうした経験からの学びをさらに深め、さらに多くの人たちのニーズに応えていくよう努力しなければならない。これまでの団結力が、あらゆる問題に立ち向かうための大きな武器になる。問題をすべて解決することは簡単じゃない。でも、今はネットワークなどを通じて相談する場やさまざまな人たちとの連携がある。すべてはみなさんがいるおかげです」と。

 

伝えたい思い

日本にも「移民の時代」が到来しつつあり、日本人と移民が互いに協力しながら、いかにしてよりよい地域社会を創っていくのかが大きな課題となっています。バージさんに今後の日本社会について尋ねると、「将来活躍してくれるだろう若い人たちにも、もっと今の社会のことを知ってほしいし、何かできることがあったらみんなが協力し合う平等な社会になってほしい」と答えてくれました。そして、「日本に来たとき、最初は日本社会のことがわからなかった。でも、FMCができてみんなで相談するうちに、わからなかったことがわかるようになった。みんながいるから解決できる。普通の生活がいちばんだと感じている」のだと。

最後にバージさんから読者のみなさんに向けてメッセージをいただきました。

自分には関係ないと思ってほしくない。だれかが困っていたらお互いに助け合ってほしい。わたしたちみんな、人間なのだから。

 

 

 

*この記事は、2011年1月発行『たぶんか便り』創刊号の記事を元にしています。本文内の情報はすべて、発行当時のものです。

石原バージ

1992年、30歳で来日。1994年に日本人男性と結婚した後、フィリピンで習得した服飾技術を活用して、名古屋市中区栄のフィリピン人女性(エンターテイナー)たちの衣装修繕で生計を立てていた。次第に修繕の依頼をしてくる女性たちからの生活相談を受けるようになり、在日フィリピン人女性たちの人権と社会福祉の向上を目指して、1997年に仲間たちと中区栄でFilipina Circle for Advancement and Progress Aichi(FICAP Aichi) を設立。2006年より現職。

フィリピン人移住者センター(Filipino Migrants Center:FMC)

〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄4丁目15-14 栄ハイホーム616    TEL  052-242-8360                          URL http://nangoc.org/ngo/jinken/post-16.php

関連記事

【団体インタビュー 015】NPO法人名古屋トルコ日本協会

web版『たぶんか便り』創刊

【団体インタビュー 014】NPO法人東海技術交流センター

web版『たぶんか便り』創刊

【団体インタビュー 013】NPO法人交流ネット

web版『たぶんか便り』創刊

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。