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【個人インタビュー 011】市野アンドレアさん

2020年07月09日 15:53 by tabunka_tokai
2020年07月09日 15:53 by tabunka_tokai

国際結婚だからといって他の結婚と変わりはない。文化の違いを楽しんでいる。

ニュージーランド出身のアンドレアさんは、名古屋駅から徒歩5分の「ESOT 旅人の英会話」という英会話スクールで英語講師をされています。スクールの創立者でもある日本人のご主人とは、結婚して5年。幼稚園に通う娘さんと、もうすぐ2歳になる息子さんがいて、現在3人目のお子さんを妊娠中です。そんなアンドレアさんに国際結婚について、また、日本で妻として、母として生活することについてお話を伺いました。

 

 

日本の第一印象

アンドレアさんが初めて日本に来たのは18歳の時。ニュージーランドの高校で日本語を学んでいました。卒業後、日本語を学ぶために奨学金をもらって、東京に10か月間滞在しました。ニュージーランドの小さな町とは違って東京は空気が汚れていたので、コンタクトレンズを付けていられず眼鏡に変えたり、ジョギング中に息苦しく感じたりしたそうです。最初は超高層のビル群にも驚いて、「東京は、ただただ大きかった」という印象だったと言います。 

NARESOME

ご主人との出会いはなんと船の上、ピースボート(注1)でした。アンドレアさんは静岡県浜松市内の中学校でALT(注2)として2年間勤めた後、ピースボートの運営する地球一周の船旅に乗船しました。アンドレアさんはボランティアの英語講師として、ご主人は一般の乗客としてピースボートに乗っていました。二人が言葉を交わすようになったのは、インド洋の島国セイシェルを訪れた時、一緒にスキューバダイビングに行く仲間を探していたご主人に誘われたことが出会ったきっかけだったと言います。ご主人の第一印象は「CuteでFriendly!」。その時はまだお互いのことを何も知らなかったそうですが、船内のデートショーという企画に疑似カップルとして出場してから会話する機会が増えたと言います。“お友達” として、アテネやキューバなどで一緒に時間を過ごすうちに仲が深まっていったのだとか。そして船旅の後半、ペルーのマチュピチュへ二人だけで行くことになり、そこから “恋人” になって日本に戻ってきたそうです。

その後、アンドレアさんは以前から予定していた空手の黒帯の昇段審査のために半年間浜松に滞在し、ご主人はその間、オーストラリアのワーキングホリデーに行きました。ご主人の帰国後、一日あけてすれ違うように、今度はアンドレアさんがワーキングホリデーでカナダへ。しばらくしてからご主人もアンドレアさんを追いかけるようにカナダへ。やっと2人で過ごせるようになり、それから約1年間、今度は2人だけでバックパックを背負って世界一周の旅へ。

(写真右上、ESOTには当時のバックパックが)

日本一のプロポーズ?

日本に帰国した二人はというと、ある日アンドレアさんのお父さんが日本へ遊びに来たため、ご主人と3人一緒に富士登山に行きました。富士山の頂上でご主人が突然、「アンドレア、ちょっと来て」と呼び出し、なんとその場でプロポーズ!お父さんもいらっしゃるのに突然!?と驚くかもしれませんが、実は登山中、ご主人はお父さんにこっそりプロポーズの許可ももらっていたそうで、「No problem」だったそうです。ご主人はとてもアクティブで、ピースボートの時には、ご主人が自主的に企画するイベントが毎日のように行われていたそうです。日本に帰国してからもそれは変わらず、そのアクティブさがご主人の魅力だと話してくれました。 

“外国人妻” の苦労

現在は家族仲睦まじくさているアンドレアさんですが、最初は不安もあったそうです。アンドレアさんのご両親からは、ご主人に関しても日本に関しても特に反対はなかったそうですが、ご主人のご家族は元々外国に長期滞在していたご主人に「外国人のお嫁さんは連れて帰ってくるなよ」と言っていたのだとか。でも、実際にアンドレアさんと会ってみて、「この人ならやっていけそうと思ってくれたみたいです」とアンドレアさん。ご主人のご両親も孫たちを可愛がってくれていて、お隣に住んでいるお義母さんがよくお子さんの面倒を見てくれるそうです。

娘さんの通う幼稚園で出会うお母さんたちは当初、アンドレアさんに興味を示しつつも、あまり声はかけてこなかったのだとか。アンドレアさんは、「たぶん、英語ができないから」だろうと考えています。以前、保護者が集まってのランチ会で、他のお母さんから「(アンドレアさんと)ずっと話してみたかったの。言葉が通じないんじゃないかと思っていたけど、日本語が話せると知って安心したわ」と話しかけられたことがありました。でも多くの場合、自分は無視されているように感じてしまうのだと。「ニュージーランドでなら普通に他のお母さんたちと上手く関係を作っていけるのに、それができないのは悲しい」とアンドレアさん。「でも、しょうがない。もっと日本語を上達させる以外に、私にできることはない」と言います。

 

日本での生活について

アンドレアさんにとって、日本の生活は「快適!」だそうです。その理由の一つは、日本語がある程度できるからだろうと言います。「日本語は必要。日本語なしだと日本での生活は難しい。日本語なしで生活していく外国人もいるけど、長い間生活していくなら日本語ができたほうが日本での生活は楽になるし、楽しくなる。日本で母国語の通じる友人が多くて日本語をあまり必要としない外国人もいるけど、日本語ができないとスーパーで買い物一つするのにも苦労します。小麦粉と砂糖の区別もつかない」と、日本語の必要性を話してくれました。

それでもまだ漢字や複雑な会話は苦手なので、幼稚園からのお便りはご主人に訳してもらったり、先生に連絡するときはご主人に書いてもらったりと、人の助けを借りないといけないこともあって、それにはストレスを感じていると言います。一方で幸運なことに、地元の産婦人科の院長先生は英語ができたのでやり取りには困らなかったし、出産時はご主人が付き添って通訳をしてくれたので言葉によるストレスもなく、戸惑わずに済んだそうです。現在、お子さんの将来のことも考えて家庭内ではできるだけ英語を使っていますが、ご主人が日本語で話しかけると英語で応えたり、日本語と英語がごちゃ混ぜになることもあるようです。

日本人の英語学習について何かアドバイスをと聞いてみると、「日本人は文法ができるから読み書きは上手。問題なのは、ミスを恐れて話さないこと。完璧な文で話さなければいけないと思っている人が多いように感じます。でも、ミスを恐れなくていいんです。コミュニケーションすることがいちばん重要。正しい英語は練習した後にできるようになるもの。だから、とにかくたくさん話して!」と教えてくれました。 

これからのこと

アンドレアさんは、今後もずっと日本で暮らすつもりだと言います。「日本に来る時は不安もあったけど、今は幸せだから」。でも、将来はどうなるかわからない、とも。「ニュージーランドの両親に何かあった時のことを思うと、その時、近くにいられるだろうかと心配になる」のだと。

また、二人いるお兄さんたちはどちらも国際結婚で、今はニュージーランドで暮らしているそうです。国際結婚はどうですか?という質問に、「国際結婚と言っても、他の結婚と変わらないですよ。結婚生活は楽しい。私は日本の文化について学び、主人はニュージーランドの文化について学ぶ。文化の違いというのは、やぅtぱり面白いですよ」と答えてくれました。娘さんのための週に一度のお弁当作りも楽しんでやっているそうです。

ニュージーランドと日本の子育てには、いろいろと違いもあるそうです。アンドレアさんは、ニュージーランドの子どものほうが自立しているように感じるそうです。小さい頃から親とは別々の部屋で寝るし、お弁当は自分で作り、家事の担当もある。週に一回だから楽しい、というお弁当作りだけど、高校生になると毎日お弁当が必要になるかもしれないので、「毎日のお弁当づくりは大変だから、高校生になったら自分で作ってもらう!」と笑いながら話してくれました。

人生のモットー

人生のモットーは何ですか?と聞くと、「ポジティブでいようと努めること」とアンドレアさん。「完璧な生活を送っている人なんていません。一見、完璧に見えてもその人の背景に何があるかはわからない。だから、自分の身に起こることに感謝することが大切」と。例えば、仕事が見つからなかったり、不採用になったりする時も、きっともっといい仕事があるから今回は不採用だったんだと思うようにしているのだと。「言うのは簡単でも、やろうとすると難しい。いつもポジティブではいられないけど、ポジティブでいようと心がけること」がアンドレアさんのモットーです。そんな前向きなアンドレアさんのこれからの生活と、ご主人はじめご家族のご多幸を願ってやみません。アンドレアさん、お幸せに!

(注1)ピースボート:ここでは、1983年に設立された国際交流NGO「ピースボート」が行なっている世界一周船の旅のこと。 http://peaceboat.org/

(注2)ALT:Assistant Langage Teacher(外国語指導助手)の略。    http://jetprogramme.org/ja/positions/

 

*この記事は、2013年4月発行『たぶんか便り』第11号の記事を元にしています。本文内の情報はすべて、発行当時のものです。   

ESOT旅人の英会話(エソット:English School of Travelers)       URL:http://www.esot.jp

 

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