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【団体インタビュー 013】NPO法人交流ネット

2020年07月09日 15:51 by tabunka_tokai
2020年07月09日 15:51 by tabunka_tokai

NPO法人交流ネットは、在日外国人を対象に電話相談を行ったり、社会保険や雇用保険など生活するうえで必要な情報についての説明会を開いたり、インターネットを通して情報提供したりしています。支援を受ける側が自立し、どんな人も平等に楽しく暮らせる社会を目指して、“終わりのない事業(継続的な事業)”をモットーに活動しています。

理事長である舩津丸謙一(ふなつまる・けんいち)さんに、活動への想いと2012年度に新しく三重県四日市市で始めた、児童発達支援・放課後等デイサービス事業について、お話を伺いました。

 

― どのようなきっかけで団体ができたのでしょうか?

派遣会社が顧客である企業を大切にするあまり、従業員を守ることより企業の意見を優先する状況になってしまったため、お互いの意見が聞けるように中間に立ちあうものが必要であると思ったのがきっかけです。日本に来て10年経っても日本語が話せない外国人は日本社会では弱者になってしまい、ブルーカラーとしてしてしか生きられません。

外国人を受け入れる基盤をつくらなかった政府や雇用主である派遣会社など、みんなそれぞれに責任はあるのだけれど誰もその責任をとれなくて何もしない。しかし何もしなくていいはずがないと考え、団体を設立しました。 

― 具体的にどのような事業をしていますか?

様々な場所で相談会を行いながら、セミナーでお話をしたり、情報交換したりしています。政府から距離が遠い外国人に情報を届けています。海外日系人大会など大きなイベントでは、日系外国人の中では現在どのような問題が多くて、そのために政府にこうした対策をしてほしいという要請を伝えています。

リーマンショックが起きた頃、一人のペルー人から「職業訓練を受けたいが外国人向けのものがない」と相談を受けました。200人から署名を集め愛知県に介護ヘルパーの講座開催を要請しました。基金訓練前の初めての無料講座だったため、思ったより応募が多くあり実現することができました。それが今でも介護職員初任者研修という形で続いています。

介護職員初任者研修では日本人が120~130時間ほどで出来ることを外国人は4ヶ月くらいかけてやっています。専門用語の学習が多いため日本語や漢字も教えているからです。卒業生のその後の進路は人それぞれですが、母国に帰って老人ホームをたちあげたペルー人も過去にいました。

― 実際にどのようなところからのニーズや声を受けて事業ができているのでしょうか?

主に電話相談が多いです。現在行っている放課後児童デイサービス事業も電話や相談会で「子どもに障がいがあるがどうしたらよいかわからない」という保護者の声を受けて始まりました。

ただ相談を受けて解決方法を見つけるのではなく、ゴールは何か、何のためにやっているのか、また自立するためにはどう支援したらよいのかを考えて、その先に事業が生まれています。一時的な事業で終わらせるのではなく継続的に事業を実施できるような事業計画を立てています。

また、日本人が受けている行政サービスを在日外国人にはどう結び付けられるかということも考えています。事業には収益が出るものと出ないものがありますので、収益事業の利益を収益の出ない事業に充てるという方法で事業を拡大しています。

― エスペランサのスタッフは何名でしょうか?

スタッフは4名です(2014年8月現在)。そのうちポルトガル語・スペイン語を話すことができるスタッフが1名ずついます。通ってきている子どもたちの半数は外国籍で、今日はペルー・ブラジル・ボリビア・日本の子どもたちがいます。子どもたちに合わせて、ポルトガル語、スペイン語、日本語で会話をしています。

エスペランサができる前、地域の小学校の特別支援教室に通っていた外国籍の子どもたちは、学校が終わったあとに通っているところはありませんでした。エスペランサは団地にも近いため、外国籍の子どもたちが多くいます。

 

〜スタッフ ミヤノさんのお話〜

― 今までで一番やりがいを感じたことはどんなことですか?

日に日に成長していく子どもたちを見るのが一番の喜びです。最初は暴れまわったり、物を投げたりしていた子が今では落ち着いて本を読んだり、何より笑った顔を見ることが多くなりました。初めは鉛筆で線をなぞることもできなかった子が、今では上手になぞることができるようになったことなど、成長するのを見ていると仕事にやりがいを感じます。

― 子どもたちへの療育はどのように学びましたか?

毎日が勉強です。子どもたちは一人一人できることが異なるため、それぞれの子ども達に合った内容を考えていかなければならないことは大変です。皆が同じことができるわけではないので、一日の計画を立てるのは難しいです。

― 今まで一番苦労したことはどんなことですか?

立ち上げ当初はたくさん調べものをしたり、団地を回って地域の人に声をかけたり、チラシを配ったり、県庁や市役所に出向いたり、他の施設に訪問したりと、とても苦労しました。今は、重度の障がいを持つ子どもたちが暴れたり、なかなか言うことが通じなかったりすることが大変です。身体は一人前に成長しているため力がとても強く、スタッフ一人では止めることができません。

自分たちには当たり前にできることであっても障がいを持つ子にとっては難しいのだと実感します。大変なことはたくさんありますが、子どもたちにとってエスペランサは必要な場だと思っています。

― 子どもたちと接するときに気を付けていることはありますか?

ほとんど部屋の中で生活しているとどうしてもストレスが溜まってしまい、外に勝手に出て行ってしまう子どもたちがいますので、注意して見ていなければなりません。ハサミを振り回したり、外に飛び出すことなどは危険だということがわからない子どもたちに危険を伝えるのは大変です。

しかし、これまで子どもたちが大けがをしたり、問題になるようなことはありませんでした。褒めるときは褒める、怒るときは怒ると、我が子のように接しています。 

― 活動を通じて日本社会の変化を感じることはありますか?

しっかりとお互いに話をすればわかり合えるという考えを持つ人が多くなったと感じています。みんな同じ人間ですから。いろいろな人のお話を聞いていると解決できないことはないのではないかと希望がわきます。

― 今後の目標は何ですか?

持続可能な事業を行い、団体をさらに拡大していきたいと思っています。終わりのあるものでなく、継続性のある事業をつくっていきたいです。子どもだけでなく大人も高齢者も暮らしやすい社会にしていくことを目指していきます。

*この記事は、2015年5月発行『たぶんか便り』第13号の記事を元にしています。本文内の情報はすべて、発行当時のものです。

 

NPO法人交流ネット                           URL  http://www.koryunet.org

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