たぶんか便り

web版『たぶんか便り』創刊

【団体インタビュー 015】NPO法人名古屋トルコ日本協会

2020年07月09日 15:49 by tabunka_tokai
2020年07月09日 15:49 by tabunka_tokai

日本の中のトルコ

NPO法人名古屋トルコ日本協会(NTJA)は、両国の人々は互いをより深く理解し、両国間の経済的・文化的・社会的な交流を深め友好を強めることを目的に平成18年9月4日に設立されたものです。(名古屋トルコ日本協会Webサイトより)

トルコといえば、世界中で人気の観光地の一つ。エキゾチックな建物や衣装。親日家で優しい国民性。ケバブやトルコアイスに美味しいコーヒー。色んなイメージがあるのではないでしょうか。政治的にも、海難事故で助け合った歴史のある日本とトルコは友好な関係にあります。ただ、近年では、シリア情勢に影響を受けてテロ攻撃が増えているなど良いイメージばかりではなくなってしまっているかもしれません。

このような状況を受けて、観光に行く際に「安全ではないかも」と身構えてしまう人もいるでしょう。そんな中、10年以上東海地区で活動を続け、トルコと日本の架け橋になってきた団体が名古屋トルコ日本協会です。人と人とをつなげる活動をしながら、トルコ人と日本人が集い共生する場所をつくっています。

 

(理事長のチェティン・セルカンさん)

 

活動の原点

2006年9月、トルコ人と日本人が一緒に集まって活動する拠点が必要だという想いを持つ4人の同志により活動が始まりました。それ以前にもトルコ文化センターを拠点にトルコ人と日本人のつながりはあったそうですが、友達の家やお店など決まった場所で食事を共にするなど個人的なつながりにとどまり、定期的に集まって友達の輪を広げる機会があまりありませんでした。トルコ人と日本人の交流を盛り上げようと、語学学校の校長先生のアイデアで現在の理事長チェティンさんと友達で何かできないかと知恵を出し合いました。友達同士でばらばらに行われていた集まりをつなぎ合わせ、より活発で安定した活動を展開するための最適な方法としてNPO法人を立ち上げることにしました。

(とてもわかりやすいリーフレット)

「最初は友達同士で気楽にはじめたこともあり、決して企業のように組織化されているわけではないので、立ち上げ時は1,2年で活動が終わってしまう心配もありました。」とチェティン理事長は振り返ります。しかし、ボランティアとして協力してくれる人々が仕事や家庭以外の限られた時間を使って力を発揮し、周囲の人を巻き込んでいくことで、4名の想いからスタートした活動は、年数を重ねるごとに人の輪が重なり合って大きくなってきました。現在は団体の理事もトルコ人と日本人で担当し、在籍する会員もトルコ人と日本人のバランスが取れた構成になっています。

人に出会い、つながる活動

当初は、どんな団体になっていくのか見えない部分もあり、トルコ人向けの通訳・翻訳やビジネスマンへの支援を実施するなど、NPO法人として収支を成り立たせる活動も意識されていました。団体としての基盤が固まるにつれて、団体の活動の原点であった、トルコ人と日本人が交流できる場を安定して供給したいという想いが実現されていきました。現在は友好を深めることを目的とした活動が中心となっています。

NTJAの現在の活動は大きく分けて、1.文化的・社会的活動、2.教育的活動、3.その他の3つから成っています。

1.文化的・社会的活動では、参加者の興味に合わせて、トルコ語会話教室、料理教室(トルコのキッチン)、トルコの手芸・ランプ作り教室、トルコの夕べ・フレンドシップ食事会、お花見・ピクニックなど、定期的に開催されているイベントや教室により様々な角度からトルコ文化に触れることができます。調理施設や大きなスペースが必要なイベントでは会場を移して実施することもあります。

 (トルコの手芸「オヤ」)

2.教育的活動では、トルコから日本へ、日本からトルコに行く(行きたい)人々の相談サポートをしています。学生や大学教員からの相談・支援の問い合わせや要望が届くのですが、それに応えることがお互いの交流を円滑にする手助けとなっています。異国での生活には不安がつきもので、様々な問題に対して悩みを聞いたりアドバイスをしたりすることで、解決に直結しなくても不安を和らげてあげられる。この考えのもと、大学などの団体だけでなく個人からの問い合わせにも対応しています。

また、活動の広がりとして、刈谷市のKIFAV文化交流グループや清州市の清須市国際交流協会などとタイアップして料理教室なども実施しています。これらは団体に在籍する会員と市の職員がつながっていたことがきっかけになっており、団体が人とのつながりを大切にしながら成長してきたからこそ実現したのです。

(ステキな手作り工芸品の数々)

 イベントや教室に参加する人々とトルコとのつながりは、身内がトルコ人と結婚して何度も訪れている、トルコでホームステイしたことがありトルコ語がペラペラという人からトルコに一度行ってみたい、トルコ人に会うのは初めてという人まで、人それぞれです。トルコ人の参加者も、数か月前に日本に来た人もいれば、何年も日本で暮らしている人もいます。

それでも、お互いにもっと知りたい、学びたいという気持ちは同じで、トルコ人も日本人も一緒になって各々の疑問や興味をぶつけ合っている光景が印象的でした。この場を求めて、県外から参加している方もいました。イベント自体も一回の参加で食事、音楽、アート展示などが楽しめて大変魅力的ですが、それ以上に、そこに集う人々との生き生きとした交流がトルコへの入口を開いてくれるのです。

 (トルコ語の絵本を見せてくれたスタッフさんたち)

名古屋トルコ日本協会の未来図

今後、名古屋トルコ日本協会をどのように発展させていきたいか、チェティン理事長はその夢を語ってくださいました。

トルコに関連した団体は全国にありますが、国内の団体同士での交流はこれから進めていかなければならない活動なのだと。日本で暮らす外国人のコミュニティは孤立してしまう傾向にあり、日本人との壁を作って自分のコミュニティに閉じこもってしまいがちだと感じているチェティン理事長の夢は、全国で活動するトルコに関連した団体と一緒になってトルコ人と日本人の間にある壁を破りながら「友達」を増やすこと。お互いのコミュニケーションを通して理解し合うという考え方は、協会の看板である団体名にも表現されており、「名古屋を拠点としたトルコと日本の理解を深め合う団体」を目指しています。

そして、それを実現するためにはトルコと日本人の交流を広げるネットワークが日本全国に根差していることが理想的なのです。限られた時間の中で活動しているため、理想に近づくには時間がかかりますが、名古屋トルコ日本協は明確なビジョンを持って前進し続けています。

 

 (とても流暢な日本語で、丁寧にわかりやすくお話くださいました)

遠くて近い国トルコ

他の外国に比べ、トルコ人にとっては日本が住みやすい場所だとチェティン理事長が教えてくれました。似ているところが沢山あるのだそうです。例えば、家に帰ると「ただいま」と言うところ、靴を脱いで家に上がるところ、年配の方々への敬いの気持ちなど。言語においてもアルタイ語を源流としており、学術的にもその類似性が注目されているようです。ヨーロッパが目と鼻の先にあるアジアの端っこのトルコと、海に囲まれた極東の日本で文化や歴史のつながりがあるとは不思議な感覚です。

もちろん、日本とトルコの違うところもあります。とくに、時間に関しても感覚が違い、例えばトルコでは日曜日にピクニックへ行こうとすと、時間や場所はトルコの友人同士では当日の朝にでもその時の都合で決めて集まるそうです。日本人は遅くても前日までにきちんと場所や集合時間を確認したがるのでトルコ人が最初は驚くこともあるのだとか。このように、宗教も地理的な環境も全く違うトルコと日本には違う点が沢山ありますが、習慣や考え方が似ている部分も少なくなく、心で通っているのです。

(トルコを知り、相互理解につながる様々な講座を開催)

トルコと日本、2つの文化の在り方

明確な未来像に基づき変容してきた名古屋トルコ日本協会ですが、NPOとしての活動を継続させていくには時代の変化に合わせて活動内容も対応させていかなければなりません。「同じ人間として付き合い、どんな問題もお互いの力を合わせて解決し、平和な関係にしたい」とチェティン理事長は強い想いを持ち、人間と人間は芯の部分で共感し合えるという信念を持っています。

子どもの頃ドイツで現地のドイツ人や自分以外の外国人と交流しながら過ごしたことや、留学生として日本に来て色々な人と触れ合ったチェティン理事長自身の経験が、こうした強い想いになって活動に取り込まれているのです。「幸せに暮らしたい、平和に過ごしたいという同じ目的を持っていながら、お互いのことを知らないから上手くいかないんです。自分の(トルコの)文化が一番いいと押し付けるのではなく、自分たちが持っている言語や文化を提供・シェアし、良いところを見つけながら長い付き合いを作り上げていくことが大事です」。

 (だれでも参加できる「トルコの朝ごはん会」はHPからお申込を)

トルコ人として持つ文化を大切にしながら、日本のことも学んでいくべきと語るチェティン理事長の考え方は、活動を通してボランティアの方々やイベント参加者が体現しています。参加させていただいた「トルコの朝ごはん」や「トルコ語教室」では、トルコ人も日本人も一緒になって言葉や食べ物、習慣を教え合ったり学び合ったりしました。リラックスした空間での肩ひじ張らない人と人との生の交流が、トルコとの距離を縮めてくれます。

今のコミュニティから一歩踏み出して、身近なトルコで「友達」ネットワークを広げるのはそれほど難しいことではないと気づかせてくれます。そんな名古屋トルコ日本協の活動に、あなたも一度触れてみてはいかがでしょうか。そこで出会う人々との人間としての共通点を模索してみたくなるはずです。

 

NPO法人名古屋トルコ日本協会                     〒460-0008 名古屋市中区栄2-12-12 アーク栄白川パークビル8階     URL http://ntja.org/

関連記事

【団体インタビュー 014】NPO法人東海技術交流センター

web版『たぶんか便り』創刊

【団体インタビュー 013】NPO法人交流ネット

web版『たぶんか便り』創刊

【団体インタビュー 012】日本ユーラシア協会愛知県連合会

web版『たぶんか便り』創刊

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。