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【団体インタビュー 014】NPO法人東海技術交流センター

2020年07月09日 15:50 by tabunka_tokai

日本の言論NPOと中国国際出版集団が2017年10月~11月に実施した「日中の両国民を対象とした共同世論調査」では、両国とも相手国をよく思う人の割合が前年の調査より増加していました。日本人が中国に「良い」印象を持つ理由として「観光客の増加や民間交流により中国人の存在が身近になっているから」が、47.8%で最多となっています。ここで言われている民間交流とは、どのような形で行われているのでしょうか。

今号では、愛知県名古屋市を拠点に日中間の民間交流の促進に取り組む、NPO法人東海技術交流センターの事務局長、鄧雪宏(トウ・セツコウ)さんにお話を伺いました。

 

 

 

団体設立のきっかけ

NPO法人東海技術交流センターが設立されたのは2005年4月。日中関係の悪化が深刻な年であり、また愛知県で日本国際博覧会(愛・地球博)が開催された年でもありました。中国福建省出身の鄧さんが日本に来たのは、大学を卒業してすぐのことでした。

当時、鄧さんの地元では海外に行くことがブームになっていて、ご自身も「その流れに乗った」のだとか。日本を選んだのは、「近くの国で身近に感じたから」だそうで、大学の先生の紹介により、当時名古屋大学文学部の部長だった森正夫氏(現 名古屋大学・愛知県立大学名誉教授)に、留学生として受け入れられました。鄧さんは、「一度も会ったことが無く、日本語もまったく話せない私を快く受け入れてくださいました。私の恩師です」と当時を振り返ります。

そこから、鄧さんの留学生としての日本生活がはじまりました。

2005年に愛知万博が開催され、鄧さんと交流のあった中国と関係の深い方が日本企業と合同でブースを出して大盛況を納めます。鄧さんは、そうした方々と「中国は日本経済の重要なパートナー。博覧会の開催を機会に中国と日本の間に立って何か役に立つような活動ができないだろうか」と何度も話し合ったそうです。

こうして、考えを同じくする10数名の有志が集まり、団体設立へと歩みを進めて行きました。

「リクルートスーツ」って、何?

設立当初の活動は、万博の開催中だったこともあり、通訳や中国団体の案内役が中心だったそうですが、その後は留学生の生活支援、就職支援などへと活動の幅を広げていきます。しかし、当時こうした活動をするNPOはまだ珍しく、道のりは決して順風満帆ではありませんでした。

「一番大変だったのは、就職フェアをやろうとしても出展企業が集まらなかったことです。当時は今よりも日本の企業は外国人の採用に積極的ではありませんでしたし、私たちにもノウハウが不足していました。今では笑い話ですが、“リクルートスーツ”の意味もわかりませんでした。『え?何ですかそれ??』みたいな(笑)

それから、留学生の生活支援の面では部屋探しがとても大変です。外国人には『貸しません、売りません』と言われることが多くて、これは今でも苦労しています。もちろん、全員の方がそうではありませんけどね。」

(2012年、初期の留学生向け就職説明会)

このように四苦八苦しながらも地道に活動を続けてきた甲斐あって、現在は毎年、年に1回開催している「グローバル人材就職フェア」は、後援団体や出展企業も多く、名古屋商工会議所との共催イベントにまで成長しています。外国人を採用したい企業と日本で働きたい留学生をつなぐイベントで、参加する留学生は多い時で280人もいたそうです。

(2017年の留学生第交流会。今ではこんなに大規模に)

「留学生とはいつもつながっています。私達のように留学をきっかけに日本に来て、2〜6年も暮らすと日本に対して良い印象を持つ人が多いです。日本を好きになって、日本で就職したい、日本社会の役に立ちたい、日本の技術などをもっと学びたい、そう考える人達をこれからも支えてあげたいと思います。小さな力かもしれませんが、私達がきっかけで就職できたと喜んでくれる人が少しでも増えればいいと思っています。」と語ってくれた鄧さん。

(熱気に溢れる会場)

一方で、市民活動ならではの苦労も少なくありません。

12年間ボランティア

「こうした活動は、誰かにあれやれ、これやれと言われてやっているわけではありませんから、私自身はやりたい時にやればいい、できないならやらないでいいかなって思うこともあります。NPOだって、お金も体力も必要ですもの。周りの方々から、『今度いつやるの?』、『来年はいつやりますか?』って言われて、ああ、やっぱりやらなくちゃ!と背中を押されて今日まで続けてきたんです。」

愛知県内には、外国人の方の就職支援を主要事業に掲げるNPOは多くありません。そうした中、NPO法人東海技術交流センターは確実に実績を積んでその内容が評価されているわけですが、経営的には非常に厳しい現実があります。

「完全にボランティアですよ。逆にお金を入れています。趣味です(笑)」と言う鄧さんは、今後も団体の活動範囲を拡大せず、しかし企業との連携をもっと高めるなど事業のクオリティを上げていくことに注力したいと考えています。

(産業界とのパイプ役として東奔西走の日々)

「就職フェアに参加してもらうこともそうですが、学生たちが企業とつながる機会を増やしてあげたいと考えています。例えばインターンシップ。日本人でも会社に就職してみたら、思っていたのと違うといったことがありますよね。自分に合うとか合わないというのは、中に入ってみないとわからないですから。外国人ならなおさらです。こうしたミスマッチを避けるためにインターンシップを利用することはとても重要だと思います。でも、日本のインターンシップは期間が短いですね。中国では1年ぐらいやりますよ。だから、日本でももう少し長くできればいいと思います。それも1社だけでなく、できれば2,3社でやれればいいなと思います。」

また、「就職支援セミナー」では、フェアがきっかけで日本の企業に就職した先輩達のスピーチを聞く機会もどんどん提供していきたいとのこと。依頼を受けた先輩達は皆、「自分のことを伝える機会なんてめったに無いから、自分にとっても勉強になります」と喜んで参加してくれるそうです。

 (今年も開催予定です!)

こうした活動を続けながら、鄧さんは新たな事業体を立ち上げ、今年4月に留学生の進学と就職をサポートするASAHI文化学院の運営をスタートさせました。まずは、中国、ネパール、ベトナムから20名の留学生を迎え、日本語の指導や文化を伝えます。学院長は鄧さんの恩師、森正夫氏です。

「NPO活動は、自分が好きでやっています。ただ、活動を続けるには経済的に余裕がなければなりせん」と鄧さん。

NPO法人設立当時のメンバーも入れ替わり、今後は営利・非営利の両輪で留学生の来日から就労までを支援していきます。新しくスタートさせた事業が軌道に乗り、NPO活動とのシナジー効果を発揮して、日本とアジア諸国の関係の発展に寄与する持続可能な取り組みへと成長するよう期待しています。

(お話を伺ったASAHI文化学院の外観) 

 

NPO法人東海技術交流センター                      URL http://npotokai.com/

ASAHI文化学院                             URL http://asahica.com/                       TEL  052−212−7233                        *現在、ASAHI文化学院では日本語教師やベトナム語の通訳を募集されています。詳しくは学院までご連絡ください。

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